海外生活を終えて日本に戻ったとき、多くのご家庭が悩むのが「帰国生受験と通常受験、うちの子はどちらが合うのだろう?」という点です。
海外で伸びた力、日本で求められる力、そして子どもの性格や学び方、、。
どれを中心に考えるかで、選ぶべき進路は大きく変わります。
どちらが“有利”というよりも、子どもがもっとも自然に力を発揮できる道を選ぶことが何より大切です。
試験の特徴や向いているタイプを知っておくと、家庭で話し合うときの軸が見えやすくなります。この記事では、2つの受験方法の特徴と、向いているケースを整理し、迷ったときの判断材料になるポイントをわかりやすく解説します。
まず知っておきたい「帰国生受験」と「通常受験」の違い
出願条件・対象の違い
帰国生受験は、一定期間の海外在住経験がある子どもを対象とした特別枠です。学校によって「1年以上の海外滞在」「帰国後●年以内」などの条件が定められており、その条件を満たす場合のみ出願できます。
一方、通常受験は国内外のすべての受験生が対象の一般枠です。海外経験の有無にかかわらず、基本的には学力試験の結果が重視されます。どの枠で受験するかによって、求められる力や準備の仕方が変わってきます。
試験内容・評価されるポイント
帰国生受験で評価されやすいのは、海外で育った背景も含めた「その子らしさ」です。
- 英語力(面接・筆記・リスニング)
- 思考力や論理的な説明力
- 自己表現力やコミュニケーション力
- 多文化への理解や柔軟性
こうした力を、英語面接やエッセイ、グループディスカッションなどを通して見る学校も多くあります。
一方、通常受験では次のような学力面が中心になります。
- 国語・算数(中学生以上なら主要科目全般)の得点
- 文章読解の速さと正確さ
- 計算力や知識問題への対応力
- 限られた時間内で問題を解ききるスピード
同じ「受験」でも、見られているポイントがかなり違うことを知っておくと、どちらが子どもに合いそうかイメージしやすくなります。
海外経験が武器になる部分/ならない部分
海外経験がそのまま武器になるのは、例えば次のような点です。
- 英語を使ったコミュニケーション力
- 違う文化を受け入れたり、理解しようとする姿勢
- 自分の意見を言葉にして伝える力
一方で、日本の通常受験で重要になる次のような力は、海外経験だけではカバーできないこともあります。
- 日本語での読解力や漢字・語彙力
- 日本独特の算数の文章題のパターン
- 暗記を中心とした知識問題への対応力
「海外にいたから有利なはず」と決めつけず、海外で伸びた力と、日本の試験で求められる力がどのくらい重なっているかを冷静に見ることが大切です。
帰国生受験に向いているケース
英語が得意で強みとして活かしたい
英語を「話す・読む・書く」ことが当たり前のように生活の一部になっている子どもにとって、帰国生受験は大きなチャンスになります。
多くの学校で、英語面接や英語の筆記試験、エッセイなどが重視されているため、英語力そのものが得点源になりやすいからです。
例えば、次のようなタイプは帰国生受験との相性が良いと言えます。
- 英語で授業を受けてきた経験が長い
- 英語の本や動画に自然に手が伸びる
- 英語で日記を書いたり、自分の考えをまとめることができる
通常受験では英語の配点が少ない学校もありますが、帰国枠では英語が「強み」として大きく評価されることが多く、子どもにとっても「自分の得意分野で勝負できる」安心感につながりやすくなります。
海外経験を評価してほしいタイプ
帰国生受験では、学力と同じくらい「どんな経験をしてきたのか」「そこから何を学んだのか」が重視されることがあります。海外での学校生活や現地の友だちとの関わりなど、子どもが積み重ねてきた日々の経験そのものが評価対象になるイメージです。
例えば、次のような子どもは帰国生枠で良さが伝わりやすくなります。
- 違う文化の中でも友だちをつくるのが得意
- クラスでのディスカッションや発表が好き
- 自分の考えを自分の言葉で話すことができる
- 初めての環境に入るときも前向きに挑戦できる
こうした強みは、ペーパーテストだけではなかなか見えにくい部分です。面接や志望理由書などで丁寧に見てくれる学校と出会えると、海外で育んだ力がそのまま「合格の決め手」になることも珍しくありません。
日本式の受験勉強にすぐ対応するのが難しい
海外の教育は、プロジェクト学習やプレゼンテーション、ディスカッションなど、「考える」「話し合う」「調べる」ことを重視している学校が多くあります。
一方、日本の受験では、漢字や語彙、計算、文章題、知識問題など、紙の上でのパフォーマンスが中心です。
そのため、次のようなギャップが生まれやすくなります。
- 日本語の長文を読むとすぐに疲れてしまう
- 算数の文章題のパターンに慣れていない
- 試験時間内に必要な量を解き終えるのが難しい
帰国後すぐに通常受験に向けた勉強に切り替えるのは、子どもにとってかなりの負担になることもあります。日本語の基礎固めや、日本式の問題形式に慣れるために時間が必要な場合は、海外で育った力を評価してくれる帰国生受験の方が、より自然に実力を発揮できるケースが多いです。
帰国生受験に向いている性格タイプ
帰国生受験は、面接やディスカッションなど「直接話す場面」が多い試験形式をとる学校もあります。そのため、次のような性格の子は特に向いていると言えます。
- 初対面の人とも比較的話しやすい
- 自分の意見や感想をその場で言葉にできる
- 新しい環境や新しい人との出会いを楽しめる
- 興味の幅が広く、質問されたときに話題が多い
もちろん、内向的だから帰国枠が向いていないということではありません。ただ、面接で「その子らしさ」が伝わりやすいタイプは、帰国生受験のメリットを受け取りやすいと言えます。
帰国生受験が力を伸ばすきっかけになるケース
帰国生枠で入学したあと、その子の持つ力がさらに伸びていくケースも少なくありません。
例えば、次のような環境が整っている学校では、海外経験をポジティブに伸ばしていくことができます。
- 英語や第二外国語の授業が充実している
- 探究学習やプロジェクト型の授業が多い
- 海外経験のある生徒や帰国生が一定数いる
- 国際交流プログラムや留学制度が整っている
こうした環境に入ることで、「海外で過ごしたこと」が単なる過去の経験で終わらず、これからの学びや進路につながる土台になっていきます。
通常受験に向いているケース
基礎学力をコツコツ積み上げられるタイプ
通常受験は、日々の学習の積み重ねがストレートに結果に結びつきやすい試験です。
国語や算数(中学生以上であれば英語・数学・理科・社会)など、どの教科も少しずつ範囲が広がっていき、その積み重ねが合否を左右します。
次のようなタイプの子どもは、通常受験ととても相性が良いです。
- 毎日の宿題や課題にコツコツ取り組める
- 同じ問題形式を何度か練習することが苦にならない
- テストで点数が上がることを励みにできる
- ミスを減らすために自分なりに工夫できる
海外経験があっても、こうした学習スタイルが身についている場合、通常受験で着実に力を発揮していくことができます。
日本の学力試験との相性が良いタイプ
日本の学力試験は、文章量が多く、細かなところまで読み取る力や、限られた時間の中で解き進めるスピードが求められます。
また、算数の文章題や図形問題など、日本ならではの「パターン」に慣れていることも大きな強みになります。
例えば、次のような子どもは通常受験で力を発揮しやすいタイプです。
- 日本語の文章を読むのがそれほど苦痛ではない
- 国語の読解問題で内容をつかむのが速い
- 算数の文章題やパターン問題を解くのが好き
- 日本語での説明の方が理解しやすいと感じる
海外経験があっても、日本語のインプット・アウトプットがスムーズであれば、通常受験の方が子どもの実力を正しく評価してもらえるケースも多くあります。
志望校が「通常枠」をメインにしている場合
志望校によっては、帰国枠がごく少数だったり、そもそも帰国生受験を設けていない場合もあります。また、帰国枠があっても募集人数がきわめて少なく、倍率が非常に高くなっている学校もあります。
次のような場合は、通常受験を選んだ方が現実的なこともあります。
- 志望校が一般入試を中心に選抜を行っている
- 帰国枠よりも通常枠の方が募集人数が多い
- 学校の教育方針が一般枠のカリキュラムに重心を置いている
「帰国枠があるかどうか」だけでなく、「どの枠から入ると、その後の学校生活がスムーズか」という視点も大切です。
通常受験に向いている性格タイプ
通常受験では、長い期間にわたって計画的に勉強を続ける力が求められます。
そのため、次のような性格の子どもとは特に相性が良いです。
- 毎日のルーティンがあると安心する
- 決まったスケジュールに沿って動くのが得意
- 静かな環境でコツコツ作業することが好き
- 本番でも大きく動揺せず、普段通りの力を出しやすい
「勝負どころで一気に実力を見せる」というタイプよりも、「じわじわと力を蓄えていく」タイプにとって、通常受験は自分のペースで成長しやすい仕組みになっています。
通常受験の良さが活きるケース
海外経験があるからといって、必ずしも帰国枠を選ぶ必要はありません。
次のような希望や状況がある場合は、通常受験を選ぶことで得られるメリットも大きくなります。
- 日本語の学力をしっかりと固めたい
- 将来、日本の大学受験へのスムーズな接続を意識している
- 周りの同年代の子と同じ基準で学力を伸ばしていきたい
- 一般枠で入学した同級生と歩調を合わせて学びたい
通常受験を通して、コツコツと基礎を積み上げていく経験は、その後の学習や人生のさまざまな場面で生きてきます。
「海外経験があるから帰国枠一択」と考えるのではなく、子どもの今の状態とこれから歩ませたい道の両方を見ながら、いちばん納得できる形を選んでいけると安心です。

