英語の本を読み続けていると、ある日ふと「前よりスラスラ読んでいるかも?」「内容を理解するのが早くなってきた気がする…」と、子どもの変化に気づくことがあります。
多読は、「その場でテストの点が上がる」タイプの学習というより、気づかないうちに“読みの土台”が育っているタイプの学習法です。
特に幼児〜小学生では、語彙テストだけでは見えない部分が大きく伸びると言われています。
この記事では、前回の「英語多読とは?」「どう始めるか」といった基本編とは内容を分けて、英語多読の効果にだけ焦点を当てて、幼児と小学生で「何が伸びるのか」をわかりやすく解説します。
英語多読の効果とは?幼児・小学生で起きる“具体的な変化”
幼児期は「英語の音とリズム」に強くなる
幼児は文字よりも「音」で言葉をとらえる時期です。
イギリスの言語教育研究者であるUsha Goswami 教授(ケンブリッジ大学)は、子どもは言語のリズムパターンに非常に敏感であり、リズムや音のまとまりを通して言葉を学んでいくと述べています。
英語多読では、音声付きの絵本や、フレーズの繰り返しが多いストーリーに触れる機会が増えます。
その結果、幼児期に大切な英語の音韻感覚(phonological awareness)が育ちやすくなります。
この音への感度は、後の
- 発音
- リスニング
- 英語の語順・リズムの理解
といった力に直結していきます。
小学生は「読む自動化(reading fluency)」が伸びる
小学生になると、文字としての英語に慣れ始めます。ここで多読を続けると伸びてくるのが、いわゆる読む自動化(reading fluency)です。
アメリカの読解研究の第一人者であるTimothy Rasinski 博士(ケント州立大学)は、「スムーズに読める子どもほど読解力も高くなる」という強い関連を指摘しています。
多読を続けることで、小学生には次のような変化が起こりやすくなります。
- 英語を一語ずつ訳さずに、意味のまとまりで理解できる
- 同じ単語を見たときに素早く認識できる
- 読むときの“ひっかかり”が減り、読み進めやすくなる
「読むスピードが速くなる」というよりも、「読むときに余計なストレスがかからなくなる」というイメージに近いです。これが、のちの英検や学校の長文読解の土台になっていきます。
ストーリーを追う力が伸びる
子どもが英語の本に慣れてくると、単語そのものよりも「ストーリーの流れ」を意識し始めます。
ハワイ大学で行われた多読の実践研究では、多読を続けた学習者はわからない単語が多少あってもストーリー全体を理解し続けられる傾向があると報告されています。
これは、次のような力が育っている証拠です。
- 前後の文脈から意味を推測する力(inferencing)
- 大事な情報とそうでない情報を自然に区別する力
- 物語の構造(起承転結)をつかむ力
こうした力は、単語テストや短い例文だけではなかなか測れませんが、「英語で読んで理解する力」の核心部分といえます。
語彙力では測れない“見えない成長”が起きる
英文の意味を「かたまり」で理解できるようになる
英語多読を続けた子どもは、「The boy went into the cave.」のような文を、日本語に訳しながらではなく、英語の語順のまま理解しやすくなります。
京都教育大学などの読解研究では、多読経験のある小学生は、そうでない子どもに比べて語順通りに英文を処理する力が高く、日本語に頭の中で訳す“返り読み”が少ないと指摘されています。
これは将来、中学・高校で長い英文を読んでいくときに、大きなアドバンテージになります。「文法を覚えたから読める」というよりも、何度も似た表現に出会うことで自然と身につく読み方です。
読書持久力(reading stamina)がつく
多読の大きな特徴のひとつが、読書持久力(reading stamina)の向上です。
最初は1ページ読むだけで疲れていた子どもが、ストーリーが面白くなってくると「もう少し読みたい!」と自分からページをめくるようになります。
少しずつ読む量が増えることで、
- 長い文章に対する抵抗感が減る
- まとまった分量の英文を読むことに慣れる
- テストの長文を最後まで読み切る力がつく
といった変化が出てきます。これは、中学受験や英検、将来の大学入試など、「長い英文と向き合う場面」で確実に役立つ力です。
学習ストレスが少なく“続けられる”
東京外国語大学の児童英語教育に関する報告などでも、英語多読は「学習負荷が比較的低く、子どもが続けやすい方法」であるとされています。
ドリルのように“頑張って解く”感覚ではなく、「お話が気になるから読む」という状態になりやすいからです。
短期的な点数アップだけを狙うのではなく、英語とのつき合いを長く続けるためのベースづくりとしても、多読はとても相性の良い方法です。
年齢別:多読で伸びやすい力
幼児(3〜6歳)で伸びやすい力
- 英語の音やリズムに対する感度
- 絵と英語のフレーズを結びつける力
- 繰り返し出てくるフレーズをそのまま覚える力
この時期の多読は、「文字を完璧に読むこと」よりも、英語の音やリズムを体で感じることがメインになります。
リズム感や音のパターンに慣れておくことで、のちのフォニックスやリーディングにも良い影響が出やすくなります。
小学校低学年で伸びやすい力
- 簡単な英文をスラスラ読む力
- ストーリー全体の流れをつかむ力
- 知っている単語をすばやく認識する力
低学年は、英語の文字と音を結びつける時期です。多読によって、「見たことがある単語」「聞いたことがある表現」がどんどん増えていくことで、読むことへのハードルが下がり、英語の本そのものに親しみがわいてきます。
小学校中〜高学年で伸びやすい力
- 読書量の増加による語彙の底上げ
- 長めの文章への抵抗感の軽減
- 知らない単語を文脈から推測する力
この時期になると、物語の内容やテーマも少し複雑になってきます。
多読を続けることで、英検4級〜3級レベルの長文が読みやすくなったり、「少しくらいわからない単語があっても気にせず読み進められる」状態になりやすくなります。
多読を続けた子によく見られる“目に見える変化”
英語アプリ・動画の理解度が上がる
多読をしていると、英語アプリや動画を見たときに、「あ、この単語さっき本で見た!」という瞬間が増えていきます。
知っている単語が増えることで、聞き取りや画面の理解もスムーズになり、英語全体への親しみが一気に増します。
英語の本を自分から手に取るようになる
多読を続けている家庭でよく聞かれるのが、「ある日、自分から英語の本を選んで読み始めた」というエピソードです。
読める本が増え、「自分でも読める」という感覚が育ってくると、英語の本が“勉強道具”ではなく“楽しみの一つ”になっていきます。
英語への苦手意識が小さくなる
テストの点数とは別に、多読の大きな効果として英語への心理的なハードルが下がることが挙げられます。
「英語の本を最後まで読めた」
「知らない単語があっても何となく分かった」
という経験が、子どもの自信につながります。
こうした小さな成功体験が積み重なることで、「英語は苦手かも…」という意識が、「英語でもけっこうできるかも」に変わっていきます。
多読は“読みの土台”を育てる最強メソッド
英語多読は、幼児から小学生までの時期に、
- 英語の音やリズムへの感度
- 英文をスムーズに読む力(読みの自動化)
- ストーリーを追う力や推測する力
- 長い文章に向き合う読書持久力
- 英語への前向きな気持ちと自信
といった、テストでは測り切れない大切な力を育ててくれます。
難しいドリルや問題集を増やす前に、まずは「簡単な英語の本を、楽しくたくさん読む」という経験を重ねていくことが、結果的に中学以降の英語学習の大きな土台になります。
今からでも遅くありません。もしご家庭で英語多読に興味があれば、ぜひお子さんと一緒に、レベルのやさしい1冊からスタートしてみてください。
