英語の本を読み始めるとき、「ちゃんと読めるのかな…」「難しくて続かないのでは…」と心配になることは珍しくありません。
でも、英語を読む力は“難しい教材”ではなく、やさしい英語をたくさん読むことで自然に育つということが、世界中の研究者によって確かめられています。
この学習法が英語多読(Extensive Reading)です。
海外の大学だけでなく、日本国内の研究者もその効果を認めており、「子どもでも無理なく伸ばせる英語学習法」として高い注目を集めています。
この記事では、学術研究をふまえながら、多読の効果・理由・始め方をやさしく解説します。
英語多読とは?
辞書を使わず“わかる英語”を大量に読む学習法
英語多読の理論を確立した一人に、Paul Nation 博士(ニュージーランド・ヴィクトリア大学/第二言語教育研究)がいます。
Nation 博士は、「語彙を身につける最良の方法は、意味が分かる英文を大量に読むこと」だと述べており、次の点が非常に重要だとしています。
- 辞書を使わずに読む
- 文脈から意味をつかむ
- 読むこと自体を楽しむ
また、ハワイ大学で20年以上多読研究を続けるRichard R. Day 博士も、「楽しんで読むことが鍵である」と強調しています。
多読は、“わからない単語を気にしながら読む”勉強ではなく、わかる英語を気持ちよく読み進めるスタイルの学習法です。
多読で伸びる力(研究で実証されている効果)
① 語彙力が自然に増える
Nation 博士の研究では、語彙習得には「同じ単語と何度も出会うこと」が不可欠とされています。
多読のように大量の英文に触れると、単語を辞書で調べなくても、文脈の中で自然に意味がわかるようになることが報告されています。
子どもにとっても、難しい単語帳より「お話の中で何度も出てくる単語」の方が覚えやすく、実際に使える語彙として定着しやすくなります。
② 読むスピードと理解力の向上
日本の大学(例えば文教大学など)の英語教育研究では、多読を継続した小中学生の多くで、読むスピードと理解度が大きく向上したことが報告されています。
やさしい本をたくさん読むことで、英文を一語ずつ訳すのではなく、「塊」で意味をとらえられるようになっていきます。
特に、初期にレベルを上げすぎず簡単な本から始めた子ほど、「読めた!」という成功体験が積み重なり、長く続けやすいという傾向も示されています。
③ 学習意欲が高まり、英語への苦手意識が減る
Day 博士らによる多読プログラムの実践研究では、多読を続けた生徒は英語への抵抗感が減り、自信や学習意欲が高まるという結果が出ています。
「自分にも読める」という感覚が育つことで、英語学習そのものに前向きになっていくのです。
これは日本の学校現場でも同様で、
「英語の授業がこわくなくなった」
「英語の本を自分から手に取るようになった」
といった変化が多く報告されています。
④ 英語の語順・文構造に慣れる
京都外国語大学の英語教育研究グループは、多読を通して英文を大量に読むことで、英語を英語の語順のまま理解する力が育つと指摘しています。
文法の説明を頭で覚えるだけでなく、何度も似た文に出会うことで、「こういう言い方をするんだ」という感覚が自然に身についていきます。
この「感覚としての文法」は、テストだけでなく、将来の英会話やライティングにも大きな土台となります。
子どもでもできるやさしい多読の始め方
① “簡単すぎる本” から始める
Nation 博士は、多読を始めるときには「理解語彙率98%以上の、とても簡単な本」を選ぶべきだと提唱しています。
これは、知らない単語がほとんど出てこないレベルというイメージです。
「ちょっと簡単すぎるかな?」くらいが実はちょうどよく、
- 途中でつまずかない
- 辞書を引かずに読み切れる
- 読み終わった達成感が得られる
といったメリットがあります。英語を読みなれていない子どもの場合、まずは絵が多く、文章が短い絵本からスタートするのがおすすめです。
② 1日5分〜10分でOK
多読というと「たくさん読まなきゃ」と構えてしまいがちですが、大切なのは量より習慣です。
最初は1日5分〜10分程度でも十分効果があります。
毎日同じ時間帯に読むようにすると、生活の中に自然と「英語を読む時間」が組み込まれていきます。
無理に長時間続けるよりも、「今日はここまでにしよう」と切り上げるくらいの方が、子どもにとっては続けやすいことも多いです。
③ 音声つきの本・アプリを活用する
Day 博士は、多読とリスニングを組み合わせることで、英語のリズムや発音の習得にも良い影響があると述べています。
絵本に音声CDや音源がついているもの、オーディオ付きのリーダー教材、アプリなどは、多読の強い味方です。
子どもが文字を追いながら音声を聞くことで、「目」と「耳」から同時に英語をインプットできます。
これにより、発音やイントネーションが自然と身につきやすくなります。
④ 本は“子ども自身が選ぶ”
国際的な多読団体であるExtensive Reading Foundation(ERF)は、「自分で選んだ本の方が、継続率も理解度も高い」と報告しています。
子どもが読みたいと思えるテーマの本を選ぶことは、多読を楽しく続けるための重要なポイントです。
動物、乗り物、ファンタジー、スポーツなど、子どもの興味に合ったジャンルから始めてみましょう。
「読ませたい本」ではなく、「子どもが読みたい本」を尊重してあげることが、多読成功のカギになります。
多読を長く続けるためのコツ
① 辞書は使わない
Nation 博士は、多読の効果を最大にするには辞書を使わないことが重要だと繰り返し述べています。
辞書を引くたびに読みの流れが止まってしまい、英語のリズムや文脈をつかむ力が育ちにくくなるからです。
わからない単語が出てきても、前後関係からなんとなく意味を想像しながら読み進めて構いません。
細かい部分よりも、「だいたいこういう話だった」という全体の理解を大切にします。
② 読んだ本を記録して達成感アップ
読んだ本のタイトルや冊数、簡単な感想などをノートやシートに記録しておくと、子ども自身が「こんなに読めたんだ!」と実感しやすくなります。
- 読んだ冊数に応じてシールを貼る
- お気に入り度を★でつける
- 簡単な絵や一言コメントを添える
こうした工夫は、英語そのものの学習効果に加えて、読書習慣と自己肯定感を育てることにもつながります。
③ 親子で一緒に読む時間をつくる
親子の共同読書は、国内外の研究で「言語発達や学習意欲に良い影響がある」とされています。
英語にまだ自信がない子どもにとって、最初は親と一緒に読むことが安心材料になります。
例えば次のようなステップで進めるとスムーズです。
- 最初は親が音読し、子どもは絵を楽しむ
- 慣れてきたら、短いセリフだけ子どもに読んでもらう
- さらに慣れたら、1ページずつ交代で読む
「ちゃんと読めたかどうか」よりも、「一緒に英語の本を楽しんだ」という経験そのものが、子どもの心に残っていきます。
まずは“簡単すぎる1冊”から
英語多読は、やさしい英語を、たくさん、楽しく読むという、とてもシンプルな学習法です。そして、この方法は
- Paul Nation 博士(ヴィクトリア大学)
- Richard R. Day 博士(ハワイ大学)
- Extensive Reading Foundation(ERF)
- 文教大学や京都外国語大学などの国内研究者
といった多くの専門家によって、その効果が支持されています。
子どもにとって負担が少なく、楽しみながら英語の土台を育てられるのが、多読のいちばんの魅力です。
まずは“簡単すぎる1冊”から始めて、「英語の本って意外と読めるかも」という小さな成功体験を重ねていきましょう。

